

障がい者アート、現代美術、子ども美術の3つの美術は、福井県発として今日まで全国で光彩を放ってきました。本展覧会は、これら3つの美術のコラボ展です。
本展覧会のタイトルには、3つの「まる」が含まれています。3つの美術は、それぞれに素晴らしい独自性を発揮しているので、まる3つ。また、違って見えるこれら3つの美術は、優れたアートとして源でつながり合う同一の美術でもあります。その独自性と同一性の理解が「はじまる」「ひろまる」「ふかまる」ことを願って、まる3つ。このような意味と願いを込めて「まるまるつながるアートてん まる」を昨年に引き続いて開催いたします。
福井県での障がい者アートへの本格的な取組みは、2007年に県外の障がい者アート展を紹介することから始まりました。そして、2010年に第1回福井県障がい者アート作品公募「きらりアート展」を開催し、今年は15回記念展を終えました。それらにあわせて開設された「若狭ものづくり美学舎きらりアート部」が、障がい者アートを衝撃の現代美術と考え、個々のアーティストに寄り添う支援を充実し多くの優れたアーティストを育成してきました。また、その他にも障がいのあるアーティストの制作を支援する場が開設されていきます。2014年には2つ目の公募展「アール・ブリュット展ふくい」が開催され、2021年には福井県障がい者芸術活動支援センター「ふくみなーと」が開設されるなど、福井県の障がい者アートへの理解は広がってきています。
当展には、2つの公募展「きらりアート展」「アール・ブリュット展」から選抜した福井県内の作家の作品約120点余りに加え、各県の芸術活動支援センターが選考した福井県、石川県、富山県、新潟県、静岡県の5県の各県2名の作家(1作家5点)の出品で計50点、全体で約170点余りの展示になります。そのなかには、県内の特別支援学校あるいは特別支援学級に通う児童の作品10点あまりも含まれています。
障がい者アートの中には、美術史の系譜などに影響されることなく作家独自の視点で創り出された一代限りのアートが多く存在します。高い集中力で生み出される作品には、世界と人間を見つめる新鮮な心が表れています。障がい者アート作品の理解とともに障がい者理解を深めていただきたいものです。
福井の現代美術は、地方でありながら常に注目を浴びてきました。それは、1922年に土岡秀太郎が、未来派運動からスタートして、戦時下の前衛芸術運動に至る「北荘画会」を結成し、画期的な活動を展開したことによります。また、敗戦直後の1948年には、その「北荘画会」を引き継ぎ、30年計画を宣言して「北美文化協会」(略称:北美)をスタートさせます。「北美」が平面、造形、ビデオアート等の各分野の先駆的作家を輩出し、福井県の現代美術をリードしました。また、そのような作家育成とともに地域の芸術文化の環境や土壌を豊かにすることをも目標としてきました。このように2つの目標を掲げた特異な前衛美術運動体は他になく、日本の美術界に確固たる地歩を印すことになりました。また、これらの美術運動体の活動と並んで、グループに属さなかった多くの現代美術作家も内外で活躍し、福井県の名を高めてきました。
現代美術は、歴史に学び、現代を問い、明日に拓かれるつながるアートです。今日発表されている現代美術は、人間の存在を問う多様な表現が試みられてきています。今回出展いただいた4名の作家による23点は、さまざまな素材を用いて平面、半立体、立体(彫刻)の形体で自らの考えを結実させています。現代美術は分りにくいと言われますが、障がい者アート、子ども美術とのコラボ展は、不思議と現代美術作家の思索の痕跡を読み取り易くします。現代美術作品と語り合い、美術の力についてお考えいただきたいと思います。
福井の子ども美術は、「北荘画会」「北美」運動を担った作家の多くが美術教師であったことから、山本鼎の自由画運動に参画して1923年に福井県下で「自由画展」を開催しています。そして、戦後の1952年の「創造美育協会」の設立には、「北美」の木水育男、「北荘画会」の藤沢典明の2人が、1955年の「造形教育センター」設立には藤沢典明が発起人になっています。2人のリーダーをもとに県下に創造主義的造形教育がひろがります。1971年には「小浜美育の会」が結成され、会員となった保育園が創造主義的造形保育の研究実践に取り組みます。その後、福井県出身の元文部省視学官・西野範夫が学習指導要領に“造形遊び”を加え、幅広い展開をみせます。そして、2010年、福井県の深められた創造主義的造形保育に共鳴した岐阜、熊本、鹿児島、徳島、愛媛、東京等の40を超える保育園・こども園が手を携えて、子どもを主体とした遊び=造形活動を追求する「子ども美術文化研究会」を設立します。
今回展示する幼児の絵は、主に「子ども美術文化研究会」主催で開催された「第12回いのちかがやく子ども美術全国展 in TOKYO」から選抜しました。ここに展示する自由画170点余りは、3つの原則<テーマを決めず・技術指導をせず、ほめて励ます>ことを大事にしながら、一人ひとりに寄り添う「待ち」の保育姿勢のなかで生み出されたものです。まだ文字を獲得しない子どもたちは、好奇心を充溢させて創造性あふれる自由画を生み出します。芸術は創造的な所産です。それ故、創造精神をぶつける子どもたちの自由画も、またアートなのです。加えて幼児の絵の中には、幼児の心や生活が現われていのちが躍動しています。一時期限りの天才アーティストが生み出す絵を楽しんでその独自性を理解いただきたいと思います。
今回の展覧会では優れた障がい者アート、現代美術、子ども美術のコラボによって3つの美術に適度な競い合いと調和が生まれ、その独自性はより際立ちます。さらに、同じ源から生み出される3つの美術の絆、つながりに気づかされます。美術の原点を要として広がる扇のように美術のウイングを大きく拡げた視点は、美術の無限の力を、社会のありようまでも考えていくことになります。
あらゆる面であらゆるところで分断される社会を目にするとき、私たちの心は穏やかではありません。今日の多様化、多文化時代のなかにおいては、お互いの違いを尊重し合いつながり合うことがより大事です。今回のコラボ展の鑑賞が、一人ひとりが生き生きとして、世代、性別、国籍、障がいの有無にかかわらず、ともに手をとりあって生きる共生社会実現への道筋を考える契機となることを願っています。
最後になりましたが、本展開催にあたり、貴重な作品をご出品いただきました作家および団体各位、ご協力いただきました関係各位に対し心から御礼申し上げます。
2024年12月
本展監修 長谷光城 熊川宿若狭美術館長、現代美術作家





































